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AWS Security Agentとは?設計レビューからペネトレーションテストまで4機能を検証してみた📖

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Yutaro Hiyama

AWS Security Agentは、設計レビュー・脅威モデリング・コードレビュー・ペネトレーションテストの4機能を通じて、設計からデプロイ前までを一気通貫でセキュリティ検証するAWSのフロンティアエージェントです。実際にコードベースへ適用した結果を交えながら、機能ごとの使い方と運用方針を整理します。


AI駆動開発でセキュリティレビューが追いつかなくなる

AI駆動開発では実装のスピードが上がる一方、セキュリティレビューは従来どおり人手に依存したままになりがちです。設計書のレビュー、コードの脆弱性チェック、リリース前の攻撃耐性確認は、どれも専門知識と時間を要するため、開発スピードに追いつかせるのが難しい工程です。

AWS Security Agentは、この4つの検証工程をAIエージェントに任せることで、セキュリティレビューの人手依存を減らすことを狙ったサービスです。

AWS Security Agentとは

AWS Security Agentは、設計レビュー・脅威モデリング・コードレビュー・ペネトレーションテストの4機能を提供します。2026年7月時点で、ペネトレーションテストのみGA(一般提供)で従量課金($50/task-hour)、残る3機能はPreviewです。ペネトレーションテストは利用開始から2ヶ月間、アカウントごとに400時間分が無料になります。

機能観点入力出力
① 設計レビュー決めた基準に沿っているか設計書・仕様書・アーキ図(最大5ファイル/合計6MB)要件ごとの準拠判定(準拠/非準拠/情報不足/対象外)
② 脅威モデリングどう攻撃されうるか設計書/ソースコード/両方システム構成図+STRIDE分類の脅威一覧
③ コードレビューこのコードに欠陥があるかリポジトリ全体/PR差分/アップロードしたソース行単位の指摘+修正PR
④ ペネトレーションテスト実際に攻撃が通るか稼働中アプリのURLと認証情報CVSS・再現手順つきの実証済み脆弱性+修正PR

Preview中の3機能にも無料枠があります。設計レビューは月200件、コードレビューは月1,000件まで無料で実行できます。

4機能は評価の物差しが2系統に分かれます。設計レビューとコードレビューは自社で定義した要件パックとの照合、脅威モデリングとペネトレーションテストは攻撃者視点(STRIDE・OWASP Top 10)です。検出1件の単位も機能ごとに異なり、設計レビューは「要件」、脅威モデリングは「脅威」、コードレビューは「コードの行」、ペネトレーションテストは「実証できた脆弱性」を指します。

要件パックで自社基準に合わせる

設計レビューとコードレビューは、要件パックと呼ぶルール集に照らして判定します。AWSが提供する要件パックは4種類で、要件の観点も粒度もそれぞれ異なります。

パック要件数観点
ASA Base Pack10認証・認可・シークレット保護・暗号化など、アプリ内部の基本動作
AWS Well-Architected32AWS上での構築方法(暗号化の強制、ネットワーク分離など)
NIST CSF37リスク評価・継続監視・インシデント対応などの運用プロセス
PCI DSS v4.0.150カード会員データ環境(CDE)に特化した保護要件

4パックを合わせると129要件になります。パックを重ねるほど観点が重複するため、Base Packを起点に必要なパックを足していく運用が現実的です。PCI DSSは決済を扱わないシステムでは、大半の要件がNot applicable(対象外)と判定されます。

要件パックに含まれない自社独自のルールは、カスタム要件として追加できます。守りたいこと(Description)、当てはめるシステム(Applicability)、合格基準(Compliance criteria)、直し方(Remediation guidance)の4項目を文章で定義する形式です。社内規程のドキュメントをそのままアップロードすれば、この4項目をAIが生成することもできます。カスタム要件は20件までという上限があります。

使い方:Agent Spaceを起点に3つの役割で回す

AWS Security Agentは、1アプリにつき1つの「Agent Space」を作るのが基本構成です。要件パックはアカウント単位で横断的に適用され、実行はAgent Spaceごとに分離されます。

運用は3つの役割に分かれます。

  • Admin:AWSコンソールでAgent Spaceを作成し、要件パックの定義や各機能の有効化を行う
  • User:Security Agent専用のWebアプリで、4機能の構成作成と実行、指摘のレビューを行う
  • Developer:GitHubやKiro、Claude Code(MCP経由)から、PRで受け取った指摘の確認と修正を行う

1人が複数の役割を兼ねても問題ありません。ただし、アクセス方式(IAMのみか、IAM Identity Center連携か)は後から変更できず、変更する場合はセットアップを作り直す必要があるため、初回の設計で決めておく必要があります。

Agent SpaceやAWS::SecurityAgent::Applicationなどの構成要素はCloudFormationやTerraform(hashicorp/awsccプロバイダー経由)でコード管理できるため、セキュリティ基準の変更をGitの差分として追跡できます。ただし、ジョブの実行そのものやマネージド要件パックの有効化はIaCの対象外で、API経由の操作が必要です。

インターフェースとPRコメントは、2026年7月時点で英語のみに対応しています。他のAWSエージェントサービスで用意されている日本語対応は、Security Agentにはまだありません。

検証してみた結果

実際にある開発案件のコードベースへ適用し、各機能の挙動を確認しました。

設計レビューでは、要件パックとして有効化したBase Packの10要件それぞれについて、準拠しているか・情報不足かが返ってきます。設計書の記述が薄い箇所は「非準拠」ではなく「Insufficient data(情報不足)」と判定される点に注意が必要です。指摘が出ないことが、そのまま安全を意味するわけではありません。

コードレビューは、差分スキャンなら5〜15分、リポジトリ全体のフルスキャンでも約1時間で結果が返ってきました。重大な指摘に対しては修正案を含むPRが自動生成され、PRに@AWS-Security-Agent fix all findings.とコメントすれば一括修正も依頼できます。

ペネトレーションテストは、約60万行規模のコードベースに対して実行したところ、実行時間は11時間でした。ただし課金は並列実行されたタスクの時間も加算されるため、実際には30時間分のコストが発生しました。実行時間の上限やスケジュール実行の機能がないため、攻撃対象から不要なリスク種別やURLパスを除外してスコープを絞ることが、実質的なコスト管理の手段になります。

運用の注意点

検証を通じて見えてきた、運用前に押さえておきたいポイントを挙げます。

ペネトレーションテストを実行するには、対象ドメインの所有権確認が必要です。Route 53で管理しているドメインならTXTレコードを設定する方法、それ以外なら指定されたJSONファイルを配置するHTTPルートでの検証方法があります。非公開環境の場合は、プライベートVPC内での設定が必要です。IP制限がある環境でも、プライベートVPCを作って固定IPからリクエストする構成にすれば対応できます。

ペネトレーションテストは実行時間が長くコストもかかるため、日中の開発フローに組み込むより、夜間実行など人が主導するタイミングで回す運用が現実的です。

利用するLLMはAWS側に内包されており、ユーザー側で選択することはできません。

設計レビューだけはAPIが提供されておらず、Webアプリからの手動実行のみです。コードレビュー・脅威モデリング・ペネトレーションテストにはAPIが用意されており、ファイルをアップロードして構成を作り、ジョブを実行し、結果を取得するという一連の操作をAWS CLIやMCPサーバーから自動化できます。

まとめ:自動化する機能と人が主導する機能を分ける

4機能のうち、コードレビューと脅威モデリングはAPIでの自動化に向いています。定期的にファイルをアップロードしてレビューさせる運用にすれば、AI駆動開発の中でも品質を落とさずに回せそうです。一方でペネトレーションテストは、実行時間とコストの両面から、リリースタイミングなど人が判断して実行する運用が向いています。

今回の検証は、特定の課題を解決するためというより、新しい技術を実験的に取り入れる位置づけで実施しました。設計レビュー・脅威モデリング・コードレビューはまだPreview段階のサービスであり、実運用に組み込む前提というよりは、まず試して勘所を掴む段階だと捉えています。

AI駆動開発のスピードに、セキュリティレビューをどう追随させるか。同じ課題を抱えている方は、ぜひ一度AWS Security Agentを試してみてはいかがでしょうか。

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