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AI 導入・活用に関する最新情報、技術トレンド、事例紹介をお届けします。
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AI を前提にした開発で差がつくのは、道具の数ではなく作業への構えのほうです。この記事では、日々の作業で実際に効いた 5 つのスタンスと、その手前で詰まっていた 3 つの課題を、使っている仕組みとあわせて整理します。
効率化の話は、たいてい「どのツールを入れるか」から始まります。ただ、施策は「何に詰まっていたか」とセットでないと、そのまま真似しても効きません。道具が同じでも、詰まっている場所が違えば効き方が変わるためです。そこで先に、詰まっていたことを開示します。
自分自身の失敗もあります。タスクを並列に切り出さず直列で処理していたため、着手の重い仕事が後回しになり、後回しにするほど重くなる状態を自分で育てていました。この状態を gaipack では「呪いタスク」と呼んでいて、チームでの対処法はやれば数分、なぜか1ヶ月放置。gaipack の「呪いタスク」対処法で別途まとめています。
これから挙げるスタンスは、格好をつけて考えたものではなく、上の状態から抜けるために残ったものです。先に全体像を置きます。この 5 つは順番にも意味があって、自分の手元、AI への渡し方、直す場所、チーム、相手と、内側から外側へ広がっていきます。
| # | スタンス | 内容 |
|---|---|---|
| 1 | 速さと主導権は、自分で取りに行く | タスクは最大 1 日、最速 15 分。ボールは渡される前に取る |
| 2 | WHY と WHAT を持ち、HOW は全部渡す | 「なぜ・何を」は人が決め、「どうやるか」は AI に渡す |
| 3 | 今日面倒だった仕事を、その日のうちに消す | 見つけるのは人、消すのは仕組み。好きな作業からは始めない |
| 4 | 個人技にしない。配る | 環境・手順・言葉をそろえて配る。自分だけ速いのは属人化 |
| 5 | 相手の頭に、合わせにいく | その作業は誰に見せるものかを先に決める |
スタンスが 5 つなら、道具の基準はもっと少なくて済みます。使っているのは「毎日触るか」と「時間短縮できるか」の 2 つだけです。基準を増やせば精度は上がりますが、3 つ以上あると選べなくなるので 2 つで止めました。週 1 回しか思い出さないものは結局忘れるため、頻度が低い道具はどれだけ高機能でも採用しません。打率ではなく出場試合数で選ぶ、という基準です。この 2 基準で選び直した結果どの構成が残ったかは、毎日触るか、時間が縮むか。AI 開発環境の一軍の選び方にまとめています。
効率化のために最初に決めたのは、ツールではなく返す速さの基準でした。基準がないと「速くしよう」が気持ちの話で終わり、判断が揺れるためです。
数字で固定しているのは次の 3 つです。
| 対象 | 基準 |
|---|---|
| 振られたタスクの完了 | 最大 1 日以内。持ち越さない |
| 最速で片付けるとき | 15 分以内 |
| 呼び出し・メンションへの反応 | 即レス。相手の待ち時間をこちらの都合で伸ばさない |
速さを基準にすると、勝手に手段が変わります。1 日で終わらせる前提に立った瞬間、「全部自分でやる」という選択肢が消えるためです。調べ方も、渡し方も、道具の選び方も変わります。速さそのものを目的にしているのではなく、やり方を変えるための制約として置いています。
この制約に一番効いたのが並列化でした。冒頭で挙げた呪いタスクは、小さな仕事に切り出して同時に走らせられるようになった時点で溶けています。並列の実行は Claude Code の Subagents(小さな仕事を別の AI に切り出して同時に走らせる仕組み)に任せていて、レビューのような分けやすい仕事から順に切り出しました。
速さの基準を置くと、次にぶつかるのは誰がボールを持つかです。ここで楽な方を選ぶと、後半で確実に困ります。楽な選択はたいてい「決めるのを後ろに送る」ことで、送った分は利息をつけて返ってくるからです。指示を待つのは楽ですが、決まったあとの手戻りを全部引き受けることになります。だから決まる前に入る、という順番にしています。
これは AI を使う前提だからこそ強く言える部分でもあります。試して砕けるコストが明らかに下がっているためです。以前なら 1 回作るのに数日かかったものが、いまは数十分で形になります。当たりに行かない技術的な理由は、もうほとんど残っていません。
速さと主導権を基準にすると、PDCA の 4 つが同じ重さではなくなります。手元の感覚を文字にすると P DDDDDDDDDD C AAAAAAAAAA くらいの比率です。計画の精度で差がつくのではなく、実行と改善の回数で差がつくと考えているからです。
ここは誤解されやすいので補足すると、経験の価値が落ちるという話ではありません。落ちるのは、経験を積むのにかかる年数のほうです。同じ 1 年でも積める試行回数が変わるため、差はむしろ開きやすくなります。確認(C)の回数を減らせているのは、後述する機械のゲートが人の代わりに見ているからで、ノーチェックで出しているわけではありません。
5 つのなかで一番再現性が高いのがこの線引きです。AI の活用で差がつくのは知識量ではなく、どこまで渡すかだからです。
人は「なぜやるのか・何を得たいのか」を決め、「どうやるか」は AI が担う。この線引きは gaipack の AIDD スキームでも同じで、AIDD の正本は AI を「人間の判断をより正確で高速にするための支援ツール」と定義しています。開発の工程も切り分けずに渡します。要件・設計・デザイン・コーディング・テスト・ドキュメント・レビューは、どれも HOW の側にあるためです。
調べる、分析する、整理する、案を出すは渡し、「どれを選ぶか」だけを持つ。人の手元に残るのは判断です。
渡し方が雑なら、返ってくるものも雑になります。AIDD スキームが実装の 3 原則で Input と Output の分離を掲げ、インプット品質が成果物品質を左右すると書いているのはこのためです。開発スピード 2 倍以上という効果も、インプット品質 80% 以上という条件付きで成立するものとして定義されています。手元でやっているのは次の 3 つです。
CLAUDE.md(Claude Code が毎回読むプロジェクトの規約ファイル)に書いて固定し、指示から消します効率化で一番よく聞かれるのが「何から手を付けるか」です。ここでは道具ではなく、選び方の話をします。
多くの人が選ぶ場所を間違えるのがここです。好きな作業から自動化すると手は動きますが、すでに苦にしていない作業なので削れる痛みが小さく、効果が出ません。探すのは、毎週繰り返している作業のなかで最も面倒で、最もコストが高くて、最も嫌われているものです。この 3 つが重なる作業は、どの現場にもたいてい 1 つあり、全員がその存在を知って見て見ぬふりをしています。
3 つ目の「嫌われている」が効きます。面倒で高コストで嫌われている作業は、自分の職場だけの事情ではないため、社内で解けた型が他のチームでもそのまま効きやすいからです。好きな作業を自動化しても、それは自分 1 人ぶんで終わります。
とはいえ「最も面倒で、最もコストが高くて、最も嫌われている作業を探せ」と言われても身構えるだけで手は動きません。探し方はもっと雑でよくて、今日、面倒だと感じた仕事を 1 つ思い出して、それを消す。これだけです。毎日いちばん面倒だったものはたいてい同じ作業なので、記録していけば上位の候補は勝手に浮かび上がってきます。
ここで前の節の線引きが効いてきます。面倒だと気づけるのは人間だけで、イラッとした、手が止まった、また同じことをやっている、という感覚は AI には検知できません。一方で消す側は AI に渡せます。見つけるのが人、消すのが仕組みという役割分担です。
落とし穴が 1 つあります。面倒な作業を AI に投げると最初は感動しますが、それを毎日人の手で同じように指示しているなら、自動化ではなく手動の AI 操作です。作業の中身が置き換わっただけで、人が張り付いている状態は変わっていません。判定は回数で機械的に決めています。
ここからチームの話になります。自分だけ速いのは効率化ではなく属人化だからです。配っているのは環境・手順・言葉の 3 つで、環境は Devcontainer と mise、手順はスキルで配っています。ここでは一番難しかった「言葉」を取り上げます。
冒頭で挙げた「全員が同じ認知で作業できていない」への答えがこれです。用語集を作るだけなら誰でもできますが、それだけだと必ず更新が止まります。そこで、人が思い出さなくても更新される形に寄せました。
使っているのは Claude Code の Hooks(AI の操作の前後に決めたコマンドを自動で走らせる仕組み)です。SessionStart で用語を読み込み、PostToolUse の Write|Edit で検証と再生成を走らせています。辞書のメンテナンスを人の善意から外した、という言い方が近いです。あわせて codegraph(コードの定義と呼び出し関係をローカルのグラフに索引する道具)を MCP 経由で使い、影響範囲の調査を 1 回の問い合わせで返せるようにしています。手元のリポジトリでは、この用語グラフがノード 54・エッジ 137 まで自動で育っています。
やめたのは、思いついた指示をその場のノリで投げて作らせるやり方です。AI の性能の問題ではなく、期待どおりに動くための土台がなかっただけでした。土台として置いているのは次の 2 つです。
自分の手元だけで速くなった状態は、チームで見ればまだ何も改善していません。配れない状態は、効率化されていないのと同じです。チーム全体へ AIDD の型を移して自走できる体制にする支援は、AIDD インハウスとしてサービス化しています。
最後のスタンスです。ここまでは自分の手元とチームの話でしたが、作業には必ず受け取る相手がいます。自分視点のまま進めると、最後に困るのは自分です。
作業に入る前に 1 行だけ決めているのがこれです。同じ調査をしても、相手が変われば出す形が変わるためです。中身は同じでも並べ方が変わります。
| 誰に見せるか | その人が知りたいこと | 成果物の形 |
|---|---|---|
| PO | 何を優先すべきか | 選択肢とトレードオフ。決められる形にする |
| PM | いつ終わるか、どこが危ないか | 期日と詰まっている場所。作業量ではなく進捗と危険信号 |
| 顧客 | 自分たちにどう影響するか | 結論と、次に何が起きるか。過程は聞かれるまで出さない |
| チームメンバー | 自分は何をすればいいか | 手順と判断の基準。迷う場所を先に潰す |
相手を決めずに自分視点で作ると、成果物はたいてい「やったことの一覧」になります。相手が見たいのは作業量ではないため、そこで話が噛み合わなくなります。しかも困るのは相手ではなく、その場で説明する自分です。これは相手への配慮というより、自分を守るための段取りです。
もう 1 つやっているのが、オンラインの打ち合わせでの立ち回りです。聞いていて自分にドメイン知識があるならそのまま進めていいのですが、そうでない場面のほうが多く、分かったフリのまま持ち帰ると作ったものが丸ごとやり直しになります。そこで画面共有を奪って、その場で図にします。
目的は絵の綺麗さではなく、「これで合ってますか」と指させる状態を会議が終わる前に作ることです。図解ツールを 3 つ挙げているのは、道具の基準を「毎日触るもの」に置いた話と矛盾して見えますが、ここだけは相手がその場で開けるかを優先しているため、絞るより選択肢を持つ側に倒しています。
5 つのスタンスの土台として置いている層が 1 つあります。AI は人が読み切れない量の成果物を一気に出すため、チェックを全部人の集中力に背負わせると必ず漏れます。人が見る前の段階に、機械で止める層が要ります。
仕込んでいるのは Lefthook の 3 段です。書式を強制する段、秘密情報を弾く段、更新履歴を生成する段の順に並んでいて、人が見るのは機械で止まるものが消えたあとです。
各段の役割は次のとおりです。commit-msg で記録の書式を機械的にそろえておくと、pre-push の git-cliff が更新履歴を自動生成できるようになるため、1 段目が最後に回収される形になっています。
betterleaks は「機能的に完成」を宣言した gitleaks の後継として原作者らが開発しているツールで、見つけた鍵がまだ有効かを HTTP で実際に検証します。実際に aws_access_key_id を混入させたコミットは、この段で止まって先に進めません。レビューで指摘すべきなのは設計であって、秘密情報の混入ではない、という切り分けです。
なお、Lefthook の parallel: true は公式にある機能ですが、手元の環境では逆に遅くなったためオフのままにしています。速そうに見える設定より実測を採る、という判断です。
5 つのスタンスを振り返ります。
| # | スタンス | 要点 |
|---|---|---|
| 1 | 速さと主導権は、自分で取りに行く | 1 日で返すと決めると、やり方のほうが変わる |
| 2 | WHY と WHAT を持ち、HOW は渡す | 調べる・分析する・整理するは渡し、判断だけ残す |
| 3 | 今日面倒だった仕事を、消していく | 見つけるのは人、消すのは仕組み |
| 4 | 個人技にしない。配る | 配れないものは、効率化されていない |
| 5 | 相手の頭に、合わせにいく | 誰に見せるかを先に決め、分からないまま持ち帰らない |
そのうえで、持ち帰るのは 1 つだけで十分です。今日から毎日触るものを 1 つだけ選ぶ。5 つ同時に始めると、たいてい全部やめることになります。
完璧を目指す必要もありません。60% でも先に出して反応を見たほうが、結果的に速く仕上がります。出したものにしか反応は返ってこないためです。gaipack では、こうしたスタンスと仕組みを社内で継続的に改善しながら、AI 駆動開発の型をお客様のチームへ移す支援も行っています。お気軽にご相談ください。
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