
締切の穴を先に見つける AI 秘書を音声で聞く
毎朝の状況把握を、画面で読むのではなく音声で聞く形に変えました。Slack Canvas・Google カレンダー・Gmail・Slack を横断して集め、その日の予定と締切の危なさを読み上げる仕組みを、Claude のスキルとして作っています。この記事では、その構造と、毎朝聞き続けられるようになるまでに効いた3つの設計をまとめます。
朝の状況把握が4つのアプリに散らばっていた
朝いちばんに「今日どうなっているか」を掴むために、毎朝4つを順に開いていました。
| 開くもの | そこで確認していること |
|---|---|
| Slack Canvas | 今日のタスク |
| Google カレンダー | 打ち合わせと作業枠 |
| Gmail | 返していないメール |
| Slack | メンションと DM |
4つ開いて回って、やっと状況が分かります。所要は10分から15分ほどで、そのあと優先順位を付けて動き出す流れでした。
困っていたのは情報がないことではなく、散らばっていることでした。しかもどれも、座って画面を見ないと分かりません。Canvas への転記は手作業なので、そこで抜け漏れも出ます。
読ませるのではなく、聞く形にした理由
音声にした理由は2つあります。
1つ目は、移動しながら受け取れることです。画面で確認しようとすると、座るか立ち止まるかしかありません。音声なら支度をしながらでも、駅まで歩きながらでも聞けます。朝のいちばん動いている時間を、そのまま状況把握に充てられるようになりました。
2つ目は、目と耳の両方を使えることです。毎朝同じ画面を見ていると読み飛ばします。耳から入ると引っかかる項目が変わるので、同じ情報でも受け取れる量が増えました。
音声化そのものが目的ではありません。受け取れる時間と量を増やすための手段として選んでいます。
全部読み上げるだけのボットは3日で聞かなくなった
最初に作ったのは、予定とメールを端から読み上げるだけのものでした。情報は正しく、抜けもありません。それでも3日で聞かなくなりました。聞き終わったあとに、結局それから自分で考え直すことになるためです。
いま使っている形は、件数を先に言い、要らないものを落とし、間に合わない予感がするものを先に出します。差がついたのは情報量ではなく削り方でした。後半で挙げる3つの設計は、すべてこの削り方の話になります。
AISE の構造: 4つのソースを5つのセクションに束ねる
AI Secretary を縮めて AISE と呼んでいます。実体は Claude のスキルで、Markdown で書いた指示書です。専用のアプリケーションは作っていません。
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思わぬ収穫が1つありました。課題管理ツールや勤怠・申請系のシステムは、どれも通知がメールで届きます。つまり Gmail を1つ押さえるだけで、これらも一緒に拾えていました。個別に連携を足す必要はありません。未承認の申請や自分宛ての依頼は、最後の「アクション待ち」で件数だけ言わせています。
新しい連携を作る前に、通知が集まっている場所を先に探すほうが早い場合がありそうです。
自動実行にせず、二言で動かす
Claude には定期実行のためのルーチン機能がありますが、毎朝のブリーフィングは自動実行にしていません。起床時間が日によって違い、朝から訪問が入る日もあるためです。時刻で走らせると、その時間に Claude を起動していなければ実行されません。しかも実行されなかったことに気づけません。毎朝ちゃんと動いたか疑うくらいなら、呼びかけて初めて動く形のほうが確実でした。
代わりに、口に出す言葉を二言まで削りました。
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「ブリーフィングして」で集まり、あとは「続けて」だけで最後まで進みます。「続けて」のたびに集め直さず、集めた内容は会話の中に持たせています。手動でも手間にならないところまで削ったので、結局この形がいちばん続いています。
収集には3分から5分かかるため、収集と読み上げは分けてあります。起きてすぐ呼びかけておけば、支度を終えて歩き出すころには読み上げられる状態になっています。
効いた3つの設計
聞き続けられるようになった理由を絞ると、書式・逆算・除外の3つになります。
音声前提で書式を捨てる
画面向けの書式のまま読ませると、見出しの記号や太字の記号まで読み上げられます。会議の URL とパスコードも延々と読まれます。歩きながら聞いているので、記号が挟まると聞き流せません。聞き流せない音声は、結局止めることになります。
そこで、記号を使わず自然な日本語の文章で書く、URL と会議 ID は読まない、各セクションはまず件数を言ってから中身に入る、というルールにしました。出力先が変われば、書き方のルールも変える必要があります。
期限の逆算チェックで穴を先に出す
いちばん効いたのがこの設計です。Canvas の期限つきタスクと、カレンダーに【タスク】として入れてある作業枠を突き合わせます。
| Canvas の期限つきタスク | カレンダーの作業枠 | 読み上げられる内容 |
|---|---|---|
| 提案書ドラフト(9/2 期限) | 9/1 15:00 に確保済み | 問題なさそうです |
| 見積り回答(9/3 期限) | 枠なし | 作業枠が確保されていません |
ある朝、「見積り回答の期限は明日ですが、作業枠が確保されていません。今日の夕方なら30分空いています」と言われました(実際の読み上げから再構成しています)。予定を思い出させてくれる仕組みは多いのですが、間に合わないことを間に合ううちに教えてくれるのは別の体験でした。
大丈夫なものには「問題なさそうです」と言わせています。安心も情報のうちなので、ここは省かずに読み上げるようにしました。
拾わないものを決める
拾うルールと同じ分量だけ、拾わないルールを書いています。読み上げないと決めたものは次のとおりです。
- メールマガジンとパスワード通知
- 共有アドレス宛のメール
- 情報共有だけで返信の要らないもの
- 同じ時刻に重複した同名の予定
- 会議 URL・会議 ID・パスコード
残るのは、今日自分が動かすものだけです。毎朝聞くものは、ノイズが1件混ざるだけで信頼が落ちます。この除外ルールは最初から書けたわけではなく、使いながら1行ずつ足していきました。
出力の質は人間側の記録の質で決まる
やってみて分かったのは、AI 側だけでは成立しないことでした。読み上げの精度は、人間側の記録の形にそのまま引きずられます。
| 人間側でやっていること | それで可能になること |
|---|---|
| Canvas の項目末尾に日付を書く | 放置日数を数えられる |
| 作業時間をカレンダーに【タスク】で入れる | 逆算チェックの材料になる |
| 終わったらチェックを付ける | 未完了だけを読み上げられる |
どれも、もともとやるべき記録です。AI のために増やした作業はありません。
AI に二重チェックさせるようになっても、Canvas への手書きのタスク整理はやめていません。5分ほどかかりますが、自分の手で書き出して並べ直すと、案外大丈夫だと分かったり、まずいから枠を足そうと判断できたりします。期限に追われている感覚を落ち着かせて状況を見るための時間として残しています。
うまくいかなかったこと
- 収集に時間がかかり、待つのが苦痛でした。収集と読み上げを分け、先に件数だけ返すようにしました
- Cc のメールまで「未返信」に混ざりました。検索はスレッド単位で当たるため、取得したあとに宛先を1通ずつ見直しています
- 全部読ませたら聞き流すようになりました。セクションを5つに絞り、1つずつ出す形にしました
- 案件名や差出人が実データのまま出てきます。社外に出す資料には出力を貼らないようにしています
読み上げには iPhone 標準の読み上げ機能を使っています。Claude 側の音声読み上げも試しましたが、聞き取りやすさの面でこちらを選びました。費用をかけない範囲での運用です。ブリーフィング全体の所要は5分ほどで、移動中や作業中に聞いています。
残っている課題もあります。こちらとしては判断済みのことまで確認を求めてくる場面があるので、そこは指示の書き方を調整していく予定です。自分と AI の両方が見落とした細かい項目も出てきているため、拾う範囲は今も足したり削ったりしています。
まとめ
音声で聞くデイリーブリーフィングを運用してみて、効いたのは機能を足したことではなく、何を読み上げないかを決めたことでした。
- 音声で聞かせるなら、画面向けの記号は捨てる
- 予定を読ませるより、締切の穴を探させる
- 人間側の記録の形とセットで設計する
社内では、こうした業務単位のスキルを少しずつ増やしています。開発ワークフローを14本のスキルに切り出した話も同じ考え方で、どれもコードではなく指示書として書けるので、まず1本から試せます。何か作るなら、拾うものより先に拾わないものを決めてみてください。
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