
現場で使える Agent Development Kit × Slack Bot で社内タスクをエージェント化する🤖
この記事では、Google の AI エージェント開発フレームワーク「Agent Development Kit(ADK)」と Slack Bot を組み合わせて、社内のこまごました業務をエージェント化する方法と、実際に運用している事例を紹介します。
Agent Development Kit(ADK)とは
ADK は、Google が提供する OSS の AI エージェント開発フレームワークです。昨年リリースされ、約1年が経過しました。
- エージェントの作成、ツールの定義、MCP の呼び出しなどをコードで記述できる
- Gemini を基本としつつ、他モデルの呼び出しも可能
- ローカル環境やクラウドコンテナ(Cloud Run など)で動作する
- Gemini Enterprise Agent PlatformのAgent Runtime 上での動作がサポートされている
エージェント系フレームワークが次々に登場している時代ですが、1年経った今も「これがデファクト」と言える決定版が現れたわけではなく、各社がしのぎを削っている、というのが正直な肌感です。そのなかで ADK は、Google のマネージドな実行環境(Gemini Enterprise Agent PlatformのAgent Runtime)とセットで使える点や、Gemini との相性の良さが魅力です。
ADK 2.0 で何が変わったか
ADK 2.0 が発表され、より高度なエージェントが実装できるようになりました。
- グラフワークフローによるエージェントフロー記述(従来はループ・順次実行・条件分岐が中心)
- 並列処理・チーム構造・動的スケーリングへの対応
- Python 以外の言語サポート(5言語程度に拡大)
- Gemini が標準対応していないスキル機能への対応
もともとは「ループ」「順番通りの実行」「条件分岐」程度の制御しかできませんでしたが、グラフワークフローによってより複雑なエージェントフローを表現でき、処理を並列に逃がしたり、複数エージェントをチームとして構成したりできるようになっています。
ADK × Slack Bot の全体像
ここからは活用事例です。筆者が普段使っているものの多くは、ADK と Slack Bot の組み合わせで動いています。この構成だけでも、かなり多くのことをエージェンティックに解決できて便利です。
Slack をインターフェースにする利点は明確です。
- 業務中はみんな基本的に Slack を見ているので、そのままインターフェースになる
- マルチメディア(画像など)を受け取れる
- ワークフローやリマインダーといった機能が揃っている
- メンション・DM・リアクションをユーザーアクションのトリガーにできる
これらのアクションを Slack Bot で受け取り、特定のエンドポイントに情報を流します。筆者はこのエンドポイントを Cloud Run 上にデプロイした ADK 製エージェントで動かしています。
エージェントに渡す能力としては、たとえば次のようなものがあります。
- ドキュメントリポジトリを検索するエージェント
- SFA / CRMを検索するエージェント
- Web 検索や、特定のペルソナ(後述)を与えたエージェント
モデルは Claude なども使えますが、安価で組み込みツールが多い Gemini のほうが取り回しが楽なので、基本は Gemini を採用しています。
また汎用的な形にして筆者がOSSで公開しています。よければぜひアレンジして活用ください。
活用事例①:社内問い合わせエージェント
社内のバックオフィス問い合わせを自動化するエージェントです。Backlog Wikiを検索して回答を返す仕組みで、ヘルプデスクSlackチャンネルで稼働しています。
構成はシンプルで、Slack Bot の裏側で Cloud Run 上のエージェントを動かし、MCP 経由でドキュメントにアクセスして情報を拾ってきます。
さらにこのエージェントでは、テキストだけでなく画像も生成して返す工夫をしています。文字だけで返す Bot は世の中にたくさんありますが、回答と一緒に図解画像を添えると、
- 長い文章を読まなくても要点が伝わる
- 理解が早まる
というメリットがあります。画像生成には Gemini の画像モデル(Nano Banana)を使っています。
こちらは公開事例にもなっています。
「社内の「誰に聞けばいい?」を AI エージェントが解決!Slack と Backlog を活用した問い合わせ自動化チャットボットの開発」
活用事例②:ペルソナエージェント
「特定のスキルを持った人物」を呼び出せるエージェントです。中に複数のスキルを抱え込ませておき、人の名前で発火してレビューやアドバイスをもらえます。
たとえば、
- 「CTO としてレビューしてほしい」ときにその人物を起動する
- 「みんなで議論したい」ときに複数人(複数ペルソナ)で返答してもらう
- 英語のブログ記事を、特定の人物のスキルに解説してもらう
といった使い方ができます。英語で読みたくない記事を、解説スキルに噛ませて日本語で要約してもらい、最終的に画像で返す、といったこともしています(画像生成スキルを組み合わせているためです)。
現在は各ユーザーが手元でスキルを鍛えてからインポートし、ペルソナエージェントに取り込む運用にしています。ここは今後、データストア(Cloud Storage など)にスキルを蓄積し、ユーザーからのフィードバックをもとに更新していく仕組みにできると面白そうだと考えています。
活用事例③:SFA / CRM 連携エージェント
営業推進の現場で使っているエージェントです。SFA / CRM は日常的に情報を登録したり引き出したりする必要がありますが、いちいち画面を操作するのは手間がかかります。そこで Bot 経由で操作を任せています。
- 相談案件の登録(Slack ワークフローから案件情報を飛ばすと、Bot が登録内容を整えてくれる)
- 現在の案件状況の確認
- CRM から入ってきた問い合わせへの一次対応を「あと一歩」まで自動化
- SFA の ToDo への登録・消し込み
特にユニークなのが日報の自動生成です。SFA に Google アカウントを連携しておくと、カレンダーや取引先とのメールのやり取りがデータとして入ってきます。これを API 越しに取得し、所定のフォーマットに沿って営業担当者の日報を自動生成しています。
日報は「自分で書く」となると分量的にも負担が大きく、続きにくいものです。Slack Bot のリマインダーで SFA 連携 Bot を呼び出し、担当者の営業日報を定期的に作成する——受注状況などのサマリも添えられ、日報作成の手間を大幅に削減できています。
今後やってみたいこと:ニュース収集の自動化
現在挑戦中の話も共有します。
「業界ニュースを自動で収集したい」というニーズは根強いのですが、これがなかなか難しい。現状は RSS リーダー(Feedly)や X を使った手動収集が主です。
理由は大きく2つあります。
- Web クロールの精度不足:鮮度の高いニュースは Web クロールでは引っかかってこないことが多く、結局 X を見るのが一番早い
- X API のコスト:X の API を使えば近いことができそうだが、利用料が高額で、現時点では費用対効果が見合わない
理想としては、会社の戦略やコンテキストを踏まえて AI が関連ニュースを収集・分析し、「世の中がこうなったので、こういう方向に舵を切ってはどうか」といった改善提案を GitHub の Issue や Pull Request で出してくれる——そんな仕組みが作れると面白いと考えています。ですが、その入り口である「情報収集」の精度とコストがボトルネックになり、まだ実現には至っていません。
ここは引き続きチャレンジしていきたいテーマです。
まとめ
| 事例 | 中身 | 効果 |
|---|---|---|
| 社内問い合わせエージェント | ドキュメント検索+画像生成で回答 | 総務の問い合わせ対応を自動化 |
| ペルソナエージェント | スキルを持つ「人物」を名前で呼び出す | レビュー・アドバイス・記事解説を即座に |
| SFA/CRM 連携エージェント | 案件登録・問い合わせ対応・日報自動生成 | 営業事務の手間を大幅削減 |
| ニュース収集の自動化 | Web クロール/X API を検討 | 精度・コストが課題で継続検討中 |
ADK と Slack Bot を組み合わせるだけでも、社内業務を「エージェンティックに」効率化できる余地は大きいと感じています。ポイントは、みんなが普段見ている Slack をインターフェースにすること、そして小さく手作りしてみることです。
みなさんも、まずは身近な社内業務の改善に、手作りのエージェントを取り入れてみてはいかがでしょうか。 エージェント開発のご相談もぜひKDDIアイレットへ!
